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アニメ界を代表する監督である押井守が描く、日本の戦後史を背景に立喰師と名乗る様々な食い逃げのプロと、店主との攻防を描いた押井色の非常に強いコメディ。
押井色が強いというか、もはやこれは商業的なエンターテイメントではなくて、同人ものや楽屋落ちにも近いと思う。
今までの押井作品のパロディはあるし、そもそも出演者がw
石井光久、鈴木敏夫、樋口真嗣、河森正治に神山健二…etc。
業界の社長やら監督やらプロデューサーやら、よくもまあこんな偉いさんばかり使ったもんだw
しかもそのキャスティングの面白さが分かる人間っていったら、やっぱりその業界を知ってないとダメでしょう?
もはや“分かるヤツだけ分かればいい”というスタイルの究極に近いね…。
演出は“スーパーライブメーション”という特異なモノだけど、これはまあ「ミニパト」の延長線上にあるし、この映画の世界観にはぴったりだと思う。
ただ、ストーリーはほぼナレーションのみで、延々説明話が進むんだよね。
疑似ドキュメンタリーという体だと思うけれども、その虚実の曖昧さを面白いと取れなければ苦痛な映画だろうなあ?
実際に周りを見れば寝てる観客も多かったけど…。
少なくとも“押井守”というスタイルを理解してないと、このノリには全く着いてこれないと思う。
個人的には爆笑はないモノのニヤリとする場面は多々あった。
だけどそのナレーションの情報量を頭で整理するのに必死で疲れる疲れるw
イメージでいえば「ミニパト」の第3話をもっとまくし立てた感じかな。
一番面白かったのは神山店長の悲劇を描いた「予知野屋」と「ロッテリア」の“牛が来る”話。
次が鈴木敏夫演じる「冷やしタヌキの政」撲殺事件。
これはまんま「犬狼伝説」のパロディ(焼き直し?)ですな。
その次が石井久光の「哭の犬丸」か。
特に「政」と「犬丸」の話は、日本の戦後史を“立喰師”と外食の歴史を通した視点の巧さに、俺は唸りながら観たもんです。
ラストの「中辛のサブ」はカレーネタだけに面白く観れましたw
しかし個性の強い映画だ…、これを商業映画として公開できる監督はほとんどいないだろうなあ。
そういう意味で押井守という作家は凄い。
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