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ある中学校の理科教師が原爆を作り上げる。彼はその原爆によって日本政府を脅迫するが…。
「原爆を作ったが、何に使ったらいいか分からない」と言う主人公はいわゆる“しらけ世代”の人物だけど、その「原爆を作る」という目的の向こうには何も持たない空虚な人物として描かれる。
なので原爆を使った脅迫で「巨人戦の中継を試合終了まで延ばせ」とか「ローリング・ストーンズを来日公演させろ」とか、何とも要求が小さい。
しかも後者は本人の希望ですらないもんな。
そんな掴み所のない犯人と彼に対峙する警察の姿を描いたサスペンスなんだけど、映画の結末がそうであるように結局主人公の虚無感は埋まることがなく、さらに刑事によって「お前が殺したいのはお前自身だ!」と看破される始末。
脅迫による政治的要求が意味をなさなくなった時代に、自分自身の満足がいったい何なのかすら分からなくなった世代の空気感がよく伝わってきて興味深いです。
全体的には荒唐無稽な話で、特にプルトニウム強奪のくだりはとんでもなく無茶。
でもそこは目をつむらないと話が進まないかなw
その上での警察とのやりとりは確かにサスペンス映画として面白いし、「ジャガー・ノート」や「タクシー・ドライバー」の影響も多々見られ、エンターテイメント映画にしようという意気込みも感じられました。
劇判だけを流して主人公や刑事の行動を描く数カットも、その曲が変に明るくて印象に残るんだよね。
これは選曲の妙か。
(30年後の「ヱヴァ:破」に引用された曲ですが、これがオリジナル。)
主人公の沢田研二は、そのどこか熱のない主人公を上手く演じていると思うけど、個人的には刑事役の菅原文太が渋すぎると思う。
ただ渋いだけかと思ったら、終盤なんてヘリから落ちるわ拳銃で撃たれまくるわ、それでも死なんw
ゾンビかよw
結局、彼の絶命の原因は主人公を巻き添えに自らビルを飛び降りたことによる転落死なんだろうけど、これは直前に主人公へ向けた「お前に他人を殺す権利はない」という台詞があるから、流れ上、殺されるわけにいかなかったからなんだろうか。
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