シネつう!
JAPAN STYLE !!

天気の子
2019年制作

満足度:

家出少年の森嶋帆高は地元の島から東京へ出てくるが、そこで"100%の晴れ女"・天野陽菜と出会う。

“新海誠らしさ”とは何かと考えた時、青春時代のモヤモヤとした気分、主人公とヒロインの距離感だったりすると思っている。
特に距離感については、そこは物理的な距離だったり歳の差だったり時間の壁だったり色々あるものの、本作では雲の上の彼岸に行ってしまうというものだが、その壁をブチ破る強い気持ちで話を突き動かす主人公の姿はエンターテイメント映画としてのカタルシスにもつながるか。
そういった傾向を顕著に表現した前作の「君の名は。」が、一般の観客にも大いにウケて作品が大ヒットしたのは周知の事実。
それをもっての本作も、前作と同様にエンターテイメントとしての疾走感やカタルシス、そして何より“新海誠らしさ”という空気感が上手く溶け合った作品になっていたように思う。

実のところ主人公には共感しにくい部分もある。
家出はともかく、警察に追われても普通に抵抗したりして完全に公務執行妨害なわけで、往生際が悪いのはどうも共感はしにくかった。
中盤から登場する警察は舞台装置として主人公を追い詰める役目以上のものは無いのだけど、老刑事もリーゼント刑事も悪い人じゃないからなあ。
もう少し素直になれよーと思ったりもするのだけど、この辺は自分がおそらく大人の目線になってしまっているのだろうね。
主人公の目線で言えば、自分たちの行動を理解しようとしていない外部の人間という壁でしかないわけで、ああいった行動に出るのも理解できないわけではない。
「若いなー」と思ったりもするものの、事実若者の行動なわけだし。

その目線の中和役に須賀という中年を配置しているのも計算づくなのだろう。
「うだつの上がらない忍野メメ」といった雰囲気の大人、いい感じです。
夏美のカラッとした感じも良かったなあ、あと凪先輩まじセンパイっす!w

本作は、主人公の行動が世界を左右してしまうという所謂「セカイ系」という要素も内包した話になっていると思う。
序盤はあまり問題として表面化していない東京の長雨という設定が、中盤では真夏の雪という異常気象として現れ、ヒロインは人柱としての運命をたどるのか否かという話にスケールアップしていく。
このあたりの展開の段取りや、話が大きくなっても“東京”という都市の情景に舞台を絞ったのはなかなか良かったな。
結局、主人公は人柱として彼岸に行ったヒロインを自らの想いと行動によって取り戻すわけだが。

その選択の果てに東京の水没があったとしても────。

この選択は正直言うと少し驚いた。
3年後の水没した東京の姿は、一般的なセカイ系ならば主人公が世界を捨てた結果なわけだ。
が、エピローグで「うぬぼれるなよ青年」という言葉でその世界観を否定して、世界はありのままの姿としての結果こうなったのだと示唆させるところに、セカイ系を纏いながらもその因果を否定することで「個人の想い」を全肯定した清々しさに持っていった。
これまでと同じようで違うようで、それでいて新海誠らしさ(ヒロインに対して求める監督の性分)も随所に残しつつ青春エンターテイメントとしても成立させた本作は、前作の「君の名は。」が偶然の産物ではない事を確信させた。
面白い。


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