8
劇場版「ワンピース」第15作。
音楽の島エレジアで開催される歌姫ウタのライブに観客として訪れたルフィたち。
そのウタはルフィの幼なじみで赤髪のシャンクスの娘だったが、彼女はある計画を胸に秘めてそのライブを開催していた。
ワンピースの世界観にあって歌で戦うキャラクター…。
「マクロス」じゃあるまいしどうするんだろうと興味を持って観たんだけど、なるほど、歌を聴かせることで彼女が支配する精神世界・ウタワールドに引っ張り込めるというわけですな。
それならばルフィやその他の強力な海賊と渡り合える戦闘描写にも納得。
そもそも海に歌に誘惑とくれば“セイレーン”を連想するけど、なんとなくそういう要素も感じ取れたし、そこに「対等に戦える場」まで組み込んだ設定は悪くなかったかな。
「マトリックス」みたいなもんだ。
ウタは割と冒頭から「これからは永遠に歌を聞いてもらえるよ」とか意味深な発言もしていたけれど、そういう観客に向けた「ちょっとしたひっかかり」から背景が明らかにしていく話の組み立て方は面白かったな。
序盤は歌に回想に現在進行といろいろと忙しくてテンポが泊まる場面もあったけど、それが終わる頃にはウタがこの話の対立軸としての“ボス”であることが見えてくる。
その彼女が観客に対して語る「みんなを幸せな新時代につれていくんだ」という内容には(その方法を言っていないだけで)偽りがないし、それがみんなの幸せだと思っているのだからなかなか手ごわいですな。
こういうのが本当の“確信犯”ってやつだ。
キャラクターとしてのウタは映画用の新キャラなので、劇中で完結したキャラ説明が必要になってくる。
「シャンクスに娘がいた」なんて後付設定はやや力技な面も感じなくはないけど、まあそこはルフィの回想くらいで目をつぶるとして、「世界を魅了する歌姫」だとぶち上げる以上はそれに説得力をもたせるような歌は聴かせてほしいところですよね。
そういう意味では、MVの様な歌唱パートで本作前半の大半を占めるというこれまた力技で納得させられてしまったw
ウタの歌唱パートを担当しているのは歌手のAdoで、パワーのある歌声には説得力があったと思う。
終盤は満を持してのシャンクスの登場。
シリーズの出発点を考えればルフィとシャンクスを直接会わせるのは扱いの難しいところだけど、そこは別世界で同時に戦っているという設定を上手く使って共闘を演出していて感心しました。
クライマックスのバトルは作画の熱量がすごすぎて何が起きているのかおっさんの目にはついていけなくなる様な瞬間もあったものの(苦笑)、敵味方で多数のキャラが登場するオールスターな展開も相まって、これぞ劇場版というダイナミックさには熱くならずにはいられなかったかなw
ということで個人的には満足。
ウタの出自も背景もシャンクスとの関係性も、ある意味での信念と信念のぶつかり合いも、「ワンピース」の一つの物語として悪くない映画になっていたかなと思う。
そして、やはり歌をテーマにした話でちゃんと歌に存在感と説得力があったのが良かった。
もどる(ワ行)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01