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土地開発公団と建設会社の汚職を、ある復讐のために公団副総裁の娘婿となった主人公が、不正を暴こうと奔走する姿を描いた黒澤明監督の社会派ドラマ。
内容は文字通り、悪い奴ほど人を食い物にして安穏と暮らしている社会の理不尽さを訴えている。
アンハッピーエンドな終幕も、そういった巨悪に対しての無力さにやるせなさばかりが残るけど、それもまた腐った一部の社会への告発としてはありだろう。
人物相関が結構ややこしいけれど、そのあたりの説明を序盤の結婚披露宴の件で一気に見せるやり方はさすがに上手い。
ただ、披露宴のシーンでは第三者である新聞記者達が解説役だったけど、それ以外のシーンでは当事者達がペラペラと説明台詞を言う場面がいくつかあって、そこはもうちょっと画で見せて欲しかったかな。
特に終盤はちょっと饒舌すぎた気がする。
車の事故の画だけで観客もだいぶ察しは付いているんだし。
個人的にはこの映画のクライマックスは、中盤にある主人公の正体が露見した瞬間。
副総裁の家の玄関で、主人公の背中を大写しにして、右上に義理の兄、左上に副総裁、左下に妻の姿がびっしり埋まっている画の時だった。
それこそもう画から伝わるサスペンス感は抜群だったんだけど、その後はなんだか話のテンションがまた落ち着いていくんですわ。
主人公は正体がばれても淡々と復讐計画を進めていくし…。
この辺の軽さはちょっと不思議だった。
その後半には空襲で焼けた軍需工場跡がねぐらになってたりと、戦後という時代の空気感も感じられて興味深かったりもしたんだけどね。
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