8
生後4か月で誘拐され、4歳までその誘拐犯に育てられた少女。
その犯人である女性の逃避行と、成人した少女の人生を描いた、角田光代の同名小説を原作にしたドラマ。
冒頭から違和感のある、実の母親の言動。
魔が差したのだろう犯人の誘拐という手段についてはもちろん犯罪であるけども、冒頭で実の母親側への同情心を防ぐことで、上手い具合に犯人側への感情移入を誘ってますな。
犯人である野々宮希和子の逃避行のきっかけは少々昼メロ的な泥臭さがあるけど、誘拐した子供への愛情が鮮明になってくると、ついつい応援してしまう。
というか子供のためにはこの方が良いとすら思わせる。
この辺は演じる永作博美の雰囲気による効果があるのだろうか。
一方、20年後のその少女(恵理菜=薫)を演じるのは井上真央。
なんとなく永作博美と雰囲気を似せているのは、血のつながらない設定なのに何かの皮肉?
なんて考えもしたけど、彼女が歩む人生自体が似ているという点で、やはり明らかに皮肉(特に実の母親に対して)な設定ですな。
4歳で実の母親のもとに返されたという設定は、当人の記憶からそれ以前のことが忘れられているかどうかという絶妙な線で、物語の構成としては良い仕掛けになっている。
ラストに野々宮希和子から受けた愛情を思い出し、涙しながら自分の子供への想いを語るシーンに結実させる展開は上手いね。
全体としては、過去と現代のシーンが入り混じる回想型の作品だけど、そういった構成がちゃんと整理されているので、感情移入を阻害することなく観やすくできているし。
泥臭い中盤に比して、鑑賞後の後味も良い作品でした。
それにしてもこの映画は男の存在が希薄だなあ。
劇団ひとりはまだ恵理菜の相手というキーになるキャラだが、それでもストーリー上は段取りの一つのような存在にも思えるw
あ…ちょっとしか出てこないけど写真館の田中泯は存在感あったな。
あれはオーラだけどw
まあメインは、母親の愛情の話…。
誘拐犯という疑似母子に芽生えた親子愛の話なので、女性主観の映画でいいんだけどね。
主人公の少女時代など、出演している子役たちは良い演技で頑張ってました。
助演では余貴美子や小池栄子、森口瑤子も濃いキャラクターたちを地に足着いた感じで好演してます。
もどる(ヤ行)
当サイトは
円柱野郎なる人物が
運営しています
since 2003.02.01