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1992年のハリウッド版西部劇「許されざる者」を、舞台を19世紀末の北海道に置き換えた渡辺謙主演のリメイク作品。
先にハリウッド版を観ているので、どうしても比較になってしまうが…。
そもそもアウトローであり悪党だった原作の主人公に対して、幕府の残党狩りに遭って蝦夷地に逃げた主人公は、スタート地点からニュアンスが違う気がするのだけど。
「女子供を殺したのは討伐隊の方だったんじゃ?」みたいなブレにしても、そういうことを見せてしまうと、本質的に違う印象になってしまうんじゃないかもと感じたな。
"伝聞は当てにならない"というのは同じことを言っているにしても、全体のテーマのブレになってしまう様ではなあ。
主人公が賞金稼ぎの話に引き込むか引き込まれるかでも違うわけだが、原作にはもっと一本筋の通った、主人公が背負い続けなければならない業といったものが描かれていたよね。
当時の北海道を描くならアイヌの話を盛り込みたくなるのも分かるけど、完成された元の脚本に対するとやはり脇道の様に感じた。
原作でインディアン(あえてこう書く)の問題には深入りしなかった事を考えれば、やはりこの映画で何を描くべきかというところで、色々入れ込みたいと色気を出しすぎなんじゃないだろうか。
とはいえ役者は渡辺謙、柄本明、柳楽優弥と上手い人ばかりなので見応えはある。
泥まみれ、血まみれになって熱演する彼らの熱は伝わってくるなあ。
さすがに佐藤浩市の警察署長はジーン・ハックマンと比べると小物感があるが…さすがに分が悪いか。
國村隼のイングリッシュ・ボブ…いや長州志士も良い感じだけど、伝聞に尾ひれがついた話がカットされてるのは残念。
北海道の景色の広さも画面映えするし、雰囲気は悪くなかった。
それだけにアレンジに色気を出し過ぎて、原作の良かった部分が薄くなった気がするのが…個人的には残念に思うところです。
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